Yuka Ikeda 池田佑香(2014年受講当時 大阪音楽大学3年)

 

「わたしこの春休みドイツに行くから!」それは突然の決断でした。今の自分の演奏を変えたい,ただ練習室にこもってひたすら練習をするのではなく,私たちが出会う作品を生み出した作曲家たちの生きた地を自ら訪れて何かをつかみ取りたい,そういう思いが強くなってきました。そして,この「ミュンヘン国際音楽セミナー」参加を決めました。

いよいよドイツ入り。まず最大の試練は,ひとりで滞在先のホテルにたどり着くことでした。切符の買い方,乗り方などすべて初めての体験です。ミュンヘン空港から中央駅まで重いトランクを引きずりながら何とか無事到着しました。この翌日から夢見た世界の始まりだったのです。

オリエンテーション当日から,早速レッスン開始です。わたしはシェーファー先生に見ていただきました。レッスン初日は,先生の熱いまなざしや惹きこまれる音楽に圧巻されました。ダイナミックな演奏,楽譜から音楽があふれ出すような表現など新たな引き出しが加わりました。レッスンの度,先生の勢いに負けないようについていこうと必死でした。

自分のレッスンがないときは,ほかの受講生のレッスンを聴講しました。様々な解釈やこうしたテクニックをあの作品にも活かしてみようと沢山のアイデア頂きました。

そして,ミュンヘンの街並みを散策し,宮殿や美術館,博物館,教会など,かなり多くのスポットを回りました。美術館で観た絵画や教会で感じた静けさ。作曲家たちが見物したかもしれない絵画,訪れたかもしれぬ場所に私自身も立てたと思うと鳥肌が立ちました。時代を超えて一種の喜びを味わうことができ,言葉にならない感覚に陥りました。

気づけば,もう修了演奏会。この日は,なぜか朝から全く緊張しませんでした。それは,この日までに見たもの,聴いたもの,味わったもの全てが私を後押しいてくれたように思いました。演奏を始めると,シェーファー先生が隣で一緒に弾いて下さっているかのように,レッスンの光景が蘇ってきました。大変素敵な会場であたたかいお客様に見守られて無事弾ききることが出来ました。

 

ミュンヘンから帰国して10日間。このセミナーに参加して,私の課題や新しいアイデアなどトランクに入りきらないほどたくさんのお土産を持って帰ってきました。音楽と向かうとミュンヘンで吸収した感覚が今でも残っており,日本にいながら気持ちはミュンヘンのままです。いつまでもこの気持ちを大切に、今後に繋いで行きたいと思います。