Mao Tanaka

田中真緒(2016年受講当時 桐朋学園大学音楽学部ピアノ科4年)

 

私は今年の春期セミナーに参加し、もう一度ミュンヘンに行きたい!という強い気持ちから夏期の参加を決めました。

ミュンヘンの夏は冬とは違った魅力があります。あらゆる建物に花が飾られ、街が色鮮やかでした。広場には椅子とテーブルが出され、遅くまで食事を楽しんだり談笑する人々が多く見られます。

 

東京と比べると周りに自然が多く、風が吹くと緑の匂いが香ってきました。湿度が低く、朝晩は涼しいミュンヘンですが、日中は刺すような強い日差しがあります。頻繁に夕立もあり、日本とは違う響きの雷に驚いたりと、ミュンヘンを身体全体で感じることができました。

今回は前回もお世話になったWeiß夫妻のもとで再びホームステイをさせて頂きました。お忙しい中親身に相談に乗って下さったり、毎日おいしいご飯を作って下さったり、観光やミュンヘンならではの場所に連れて行って下さったり、私の出演した全てのコンサートに足を運んで下さったりと、感謝してもしきれないほどたくさんのことを支え頂きました。

 

前回は、ホストファミリーとドイツ語で会話をする中で、語彙力が足りないばかりに思ったニュアンスのまま言葉に出来ないもどかしさを痛感しました。それがとても悔しく、一層力を入れてドイツ語を勉強しました。今回はその成果を試す場が多かったように思います。中でも印象に残っているのは、Weiß夫妻の友人の誕生日パーティに同行させて頂いたことです。いきなり外国人が伺ってしまったのにも関わらず歓迎して下さり、たくさんの人と話すことができました。前回と比べて話せる話題の数も増え(た気がします)、日本のことを話したりドイツの事情も聞くことができ、嬉しかったです。

 

加えて、言葉のことだけではない発見もありました。そのご友人はピアノが趣味で、パーティの中にその発表の場がありモーツァルトやプーランクを聴かせて頂きました(その後なぜか私も飛び入りで演奏することに……!)。年齢層の幅広いお客さん方は全員音楽を積極的に聴いており、あたたかい雰囲気の中私も一緒に音楽を楽しめました。日本ではまだまだ堅苦しいというイメージが抜けませんが、ミュンヘンでは常に生活の一部にクラシック音楽があるのだということを実感させられた夜になりました。

私はベッケラー先生のレッスンを4回受講しました。ベッケラー先生のレッスンで是非弾きたい!と古典派も多く選曲しました。ベッケラー先生からは頻繁に「ほんの小さいことなのだけれど……」と前置きされたアドバイスを頂いたのですが、その効果は全く小さくありませんでした。音楽の質が劇的に変わり、私の悩みや迷いの解決策が見つけられる、感動の連続のレッスンでした。ベッケラー先生の音の美しさは何度聴いても胸にじんわりと沁み、涙が出そうになります。全ての音に意味を見出すことができ、私もそんな音楽ができたら、と強く思いました。

 

また今回は推薦を頂き、Prof. Dr. Gerbitzさんのお屋敷でコンサートをさせて頂きました。とても歴史的なお屋敷でお客さんとの距離が近く対話のあるコンサートは、普段の本番とはまた違った緊張感がありました。ドイツ人のお客さんの前でベートーヴェンを演奏する貴重な経験になりました。

 

翌日の修了コンサートでは前回と同じように演奏前から大きな拍手と笑顔で迎えて下さり、再びこの舞台に戻って来れたと改めて実感しました。

 

パーティやお屋敷のコンサートでも感じた音楽を真摯に聴く姿勢に応えられるように弾きたいと思い、演奏しました。終演後にはまた多くのあたたかい言葉をかけて頂き、前回の私の演奏を覚えてくれていたお客さんもいらっしゃって嬉しく思いました。

 

尊敬する先生方や大好きなホストファミリーとの再会、そして受講生メンバーにも恵まれ、前回以上に多くのことを感じた、濃密な一週間を過ごすことが出来ました。

 

最後になりましたが、様々な面でサポートして下さった小長様、朝島様、関係者の皆様、本当にお世話になりました。またミュンヘンに戻って来れるよう、精進したいと思っています。ありがとうございました。