庄村栞莉(2014年受講当時 鹿児島大学教育学部4年)

 

高校二年生の時初めてドイツへ行き、その時からまた必ずこの土地を訪れたいと思っていました。そして、大学生活最後の年に友人の紹介で出会ったのがこのセミナーでした。実際にドイツへ行くまでは、言葉やレッスン曲目、乗り物での移動など不安もたくさんありましたが、セミナー初日でその不安もほとんどなくなってしまいました。

 

私は、ベッケラー先生のレッスンを4回受講しました。レッスン初日、私は大好きなバッハの協奏曲を持っていきました。先生は、私のやりたい音楽を存分に尊重してくださり、そこからさらに音楽が広がっていくような素敵なアドバイスをたくさんくださいました。好きではあったけれど、これでいいのだろうかともやもやしていた部分のあった協奏曲が、先生のレッスンによって自信をもって演奏することが出来るようになりました。更に、協奏曲は、演奏解釈の他にもどうしたらソリストらしく演奏出来るか、聴衆に自分が感じている緊張感や気持ちの高まりを伝えられるか等も教えていただきました。

 

そして、ベートーヴェンを後半2回では教えていただきました。初めて先生の前で演奏したときと、修了演奏会で演奏したときとは、自分でも大きく変わることが出来たと感じました。それは、私の不安な気持ちを察して丁寧に本当に優しく語りかけてくれた先生のおかげであると思います。先生の音もまた心が温まるような優しい響きであり、ピアノを離れているときでもその響きが思い浮かべられます。

 

本当に4回のレッスンは充実しており、とても幸せな時間でした。自分の演奏が変わっていく喜びや、響かせたい音をイメージしてそれを追及する楽しさを、ベッケラー先生は言葉、身体そして音を使って惜しみなく教えてくださったと思います。修了演奏会でも、先生とのレッスンの情景が頭に浮かび、とても幸せな気持ちで演奏することが出来ました。今までただ緊張の押しつぶされてしまうという演奏に悩まされていましたが、演奏を楽しみ、それを伝えるという楽しさを確かに感じることが出来たと思います。

 

今回の滞在では、観光も充実していました。特に心に残っているのは教会で聴くことが出来たパイプオルガンの演奏です。今までよく日本でのレッスンでオルガンのようにと指導を受けることがありましたが、実際に聴いたオルガンの音は、私の心を包み込みいつまでも深く優しく響いていました。これがオルガンの音なのだな、と思い涙が溢れました。ドイツの荘厳な建物や、素敵な街並みを目で見て、自分の足で歩き、私自身の心はもちろん、音楽も豊かになったのではないかと思います。

このセミナーは、本当に楽しくてあっという間の時間でした。受講している仲間も自分と同じように音楽を愛しているため、共に語り合う時間は楽しくて、様々な考えを聞くことが出来ました。さらに、通訳の小長さんや友の会の方々には、たくさん相談にものっていただいて、とても感謝しています。

 

 

ここで出会えた全ての人と、これからもずっと音楽を通してつながっていけたらと思います。